歩くことのススメ:うつ病 リハビリワーク②
体力を取り戻そう
集中力を取り戻すために、「自分の好きなことをしなさい」というのが、よく言う うつ病のリハビリになります。けれど、やはり何をするにも体力が必要になってきます。体が動かなくなり、起き上がるのも難しい状況になった人なら、尚更です。
歩くことで体力を回復させ、また同時に脳に刺激を送ることが大事になってきます。うつ病になると会話力、様々な認知機能など多くの情報処理能力が低下しています。
もちろん、あなた自身が取り組みたい体力面のワークがあれば、それを優先させてみるのもいいと思います。けれど、うつ病を発症する多くの人は、それまで運動を怠り、体を動かしていない人が多いと思います。誰にでも簡単に出来るウォーキングも、体力面のワークに取り入れてみてください。
読書をしたり、デスクワークに必要なリハビリの前に、歩き始めましょう。
体力面のワークをする元気があるなら復帰したいと考えてしまうかもしれません。そんな方に、骨折で寝たきりになった老人の例えで紹介します。
動けなくなった老人は脳に刺激が送られなくなったことで、認知症の症状が進行しやすくなりますよね?その状態で、何か読め、書け、なんて以前よりも出来ないですよね。歩行訓練と様々なリハビリワークをしているはずです。
もちろん、外に出るのもおっくうで仕方がない時もあります。計画していて、実際に取り組めなかったときに自己否定をしてしまいやすくなります。
計画を立てた自分を褒め、動けなかった自分を許しましょう。そういう病なんです。辛いのは理解しています。でも、あなたは大丈夫。出来るようになるから。自分を信じましょう。
参加しています
安眠、そして部屋の掃除のススメ:うつ病 リハビリワーク①
そのまえに
意欲が湧かなくて、こまっているのに。はい、おっしゃる通りです。だから、まず眠ることが必要なんです。色々と考えたり、プレッシャーを感じている人も、しばらくあなた自身の為に時間を使ってください。
なぜ、部屋の掃除が必要なの?
「目に入る景色を変えるため」です。動けなくなって、掃除なんかおっくうだったりしますよね。そんなときは換気をしましょう。そして、少しずつ部屋の中のものを整理していきましょう。一度に掃除をし終えてしまう必要はありません。あなたのペースでいいんです。
あなたが今いる環境をもっともっと大切に扱いましょう。だって、他の誰でもない、あなたが居るところなんだから!
部屋の中もそうですが、特にうつ病で苦しんでいる人は、頭の中が言葉だったり、過去の思い出だったりでギュウギュウだと思います。そんなときはリハビリワーク③を参考にしてみてください。出しましょう。部屋の中のいらないものも、頭の中の言葉も出して、「空」を作りましょう。
少しずつ、整理していきましょう。環境に空間を作りましょう。
老子の11章「無用の用」でもこう紹介されています。
自転車の車輪というのは、たくさんのスポークが輪の中心の甑(こしき)に集まっている。この輪の中心の甑は空っぽだ。でも、真ん中が空っぽだから車輪は車輪の動きが出来るんだ。
(略)
家の造りだってそうさ、中が空っぽだから部屋として使えるんだ。
人は目に見えるもの、形のあるもの、中身の詰まっているものを大事にするけれど、じつは、本当に大事なものは、何もない、「空」が支えているんだよ。これを「無用の用」というんだ。
安眠の必要性
寝入る直前まで考え込んでしまう、こんな癖はありませんか?過去のアレコレに囚われ続けていませんか?
感情のバランスが取れなくて、そんな自分を罰してしまいやすい時期です。もし、音に苦しんでいる状況であれば、耳栓を使ってみたり、安眠につながりやすいBGM(歌詞なし)を流してもいいかもしれません。
*****
睡眠中、人は体験した出来事(記憶・行動など)をまとめあげ(統合)、学習したことを自然に行動に移せるようにしています。
逆上がりを練習している 子供をイメージしてください。その子が練習初日には逆上がりを習得できなくても、何日間か練習すると出来るようになりますね?
また、勉強や記憶も同じです。長期記憶は睡眠を重ね、何回も体験することで潜在意識に記憶を入れ、定着させます。そして、学んだことを行動に移し、間違えながら覚え、まとめあげていくんです。(もちろん、技術習得には意志の強さも必要です)
不眠に苦しんでいるうつ病患者が、記憶に苦しむのは このためだと私は考えています。
*****
ここで、ミルトン・エリクソンという人を紹介します。
彼は精神科医、催眠療法士、心理学者という肩書を持つ人でした。
けれど、生まれつき学習障害を持ち(3とmの区別がつかなかったそうです)、さらにポリオに感染して、17歳の時に全身マヒにより体を動かすことが出来なくなりました。
そこで、エリクソンは幼い妹の行動を観察して 体の動かし方を学び、自分のリハビリにつなげました。そして、足は引きずっていましたが、再び立ち上がったのです。
私の声はあなたとともに―ミルトン・エリクソンのいやしのストーリー
この本には、エリクソンが行った催眠療法や患者との対話などが紹介されています。うつ病とは直接関係はありませんが、この本に書かれている言葉をいくつか紹介します。
- 学んだことを「統合」するためにはペースを落として時間を取るように。
- してはならない、すべきではないという観念で行動しない。したいことをする。
- 病気・悲劇・死は人生の消化されない部分である。どんな食事にも消化されない部分はあり、それは重要な部分である。
- 来年は新しい年。明日は別の日。陽は明日また昇る。どんなに打ちひしがれようとも、いつも何か新しい成長と新しい素地がある。
様々なエピソードが紹介されています。私は患者さんとエリクソンの対話から、物事の捉え方を変えるための、ちょっとしたヒントを頂くことが出来たと思っています。
私は自分に合った治療が見つからず(というより自分の内面と向き合うのを恐れていたためなんですが)、結局 催眠療法を体験してから順調に回復しました。催眠療法については、そのメカニズム、別の催眠療法士の著書などを別の記事で書くつもりです。
*****
〈参考図書〉
私の声はあなたとともに―ミルトン・エリクソンのいやしのストーリー
参加しています
うつ病かな?と思っている人へ (精神科・心療内科に行く前に:改訂ver.)
リハビリワークのススメ
このブログを読み始めた方の中には、不眠・集中力の低下・無気力など様々な症状で、文章を読むことも苦にしている人がいると思います。
リハビリに必要なことは 大きく4つです。
- 安眠(と部屋の掃除)
- 歩く(激しい運動よりも、時間をかけて距離を歩けるようになりましょう)歩行による脳に刺激を送り、また時間があるときは耳のマッサージを取り入れてみてください。時間があったら耳たぶと耳全体を揉んでみてね。イライラした時にもおススメです。
- 内面に向き合い、思考の癖を知り、物事の捉え方を変えていく(行動認知法)
- 集中力を取り戻す。読書など、あなたに合った頭脳ワーク。
うつ状態の強い方には抗うつ剤、睡眠のサポートとして睡眠導入剤など、医師の診察・判断により治療を行っていきます。
次回以降、なぜこのリハビリが必要なのか解説します。
※もちろん動けるようになったら、歌うことでストレス発散する人は歌い、その他にも自分に合ったストレス発散法も是非取り入れてください!
--------------------------------------------------------------------------------------------------------
薬を服用する前に
現在、初診時に薬を処方されることが多いと思います。私もそうでした。知人も同様でした。
けれど、そこで薬を服用する前に、他の医師の治療プラン(2nd ・3rd オピニオン)も知りに行ってください。初めての診察で疲れてしまっているかもしれませんが、薬の量が多すぎないか、など助言を貰いに行ってください。
大量の薬剤を処方され、コントロールを失い判断力の低下を招く前に、現在の自分の症状だったらどのような治療プランを受けられるのか、数人の医師に相談してみることを勧めます。
私は精神科に対する偏見などにより、受診を2年ほど先延ばしにし、かなり失敗しました。さらに医師との相性もあります。友人経由で、ある内科医に助言を頂いたことがあります。
「一人の先生の所で、ずっと診てもらって良くならないなら、他の先生の所に助言を貰いに行っていいんだよ。仮に、新しい先生が合わないなって思ったら、前の先生の所に戻っていいんだから。」
医師を変えるのは少し勇気がいるかもしれませんが、長引くようでしたら思い出してください。また、抗うつ薬は、治すために服用するのではありません。症状を軽くするために服用します。薬の量も体重換算ではなく、あなたの感覚を優先します。(もちろん最大量は決められています。)体質によって、薬品、薬剤に過敏な方は医師に伝えておくといいと思います。
--------------------------------------------------------------------------------------------------------
医師との程よい距離感のススメ
精神科医・催眠療法士・心理学者でもあるミルトン・エリクソンの弟子のシドニー・ローゼンの言葉です。
“医師の実際の役割は、治療に対する知識を患者の必要と希望に応じて用いて治療し、病気を治すことである。病気になった時、多くの患者は医師を全能の神や力強い両親に祭り上げて、退行してしまう。”
つまり、医師が絶対に正しいなんて思わないでください。間違えることもあります。治療方針などが納得がいかない場合は冷静になり、違う医師の話も聞いてみましょう。そして、あなたは、本来 自分で立ち治る力を持っていることを覚えておいてください。今はサポートを必要としているかもしれませんが、必ず立ち上がることが出来るんです。
写真は紅葉(もみじ)。もみじと楓の違いって?赤色の濃さに関係しているそうだ。